
2025年3月8日箱根八里の石畳「東坂」を歩いた記録
松山拓也
このルートは、江戸時代から旅人が行き来していた石畳が残る道を歩けるという、旅のロマンを感じずにはいられない道を歩くことにした。時期は三月、温かな日もあるが、突然また冬に戻るという、いわゆる三寒四温の時期。
実際に歩いた記録を記載します。
今回は期せずして大雪となったが、真夏の暑い時期では歩きにくいこの標高、このルートを歩くのは、春か秋が最適であり、次いで冬となると思われる。
この記事は箱根八里を、冬に歩こうという方への参考となるだろうし、当然、春や秋に歩く方も参考にして下されば幸いです。
今回のルートは、小田原駅からバスに乗り、箱根湯本駅の手前の「三枚橋バス停」で下車、目的地は芦ノ湖としました。芦ノ湖まで行けば、宿もホテルもあるし、元箱根港にはバス停もあり、小田原側へも三島側にも降りることが出来るという作戦です。
私は、日を分けて、小田原方面と芦ノ湖の間の通称「東坂」と、芦ノ湖と三島の間の通称「西坂」を歩いたのであるが、どのコースも素晴らしく、自然と歴史の融合するコースがここまで残されつつ保存されていることに感動を覚えつつ歩かせて頂いた。
江戸時代の旅人、例えば松尾芭蕉や弥二さん喜多さんが歩いたであろう日本一のメジャールートであるこのトレイルが残されていて、現在では誰もが自由に歩けるようになっているというのは素晴らしいことであると感じました。
また、石畳が残る旧東海道は、石畳を歩く「徒歩のみで通行できるトレイル」と、車が走る車道とが基本的には並走している為、バス停が各所に有り、突然のトラブルの場合はエスケープも可能であるし、今日はここまで、と決めて歩くことが出来るのは、一般的な登山道との大きな違いである。
コースは、アスファルトの道を歩いていると、途中、石畳道が現れ、現代の道と古道とをミックスしながら歩く感じである。とはいえ、各坂道には名前が付けられ、石碑や見どころなども散在し、歩いていて飽きない、非常に魅力あるルートだと感じた。
難易度としたら、一日で8里32キロを走破するとしたらハードであろうが、約半分のこのルート、半日がかりで歩き、移動や食事などを含め丸一日楽しむとすれば初心者でも挑戦出来る安全で快適なルートである。
今回、紹介する箱根の東坂コースは距離約13km、参考の標高として、スタート地点の三枚橋バス停の標高は約89m、ゴールとした芦ノ湖、元箱根港の標高は約730m、標高差640mのコースである。
北アルプスの玄関口、上高地の河童橋から明神・徳沢を経て横尾山荘までが約11km。標高差約120mで所要時間は約3時間とされている。実際に観光客で横尾まで11km3時間歩く人は限られる。行くのは登山者のみだ。
今回歩いた箱根の東坂は当然ながら山であり、ある種の危険が伴い自己責任が求められる「登山」の世界でもある。
実際、今回の行動中には、スタート地点の箱根湯本では穏やかな気候であったが、ゴール地点の芦ノ湖に近づくにつれ気温は劇的に下がり、雪が強風で吹きつけるという猛烈な天候となった。
箱根八里を歩く際は安全の最優先を念頭に、命を護る装備であるレインウェアやヘッドライトなど最低限の用具の準備はもちろん、滑りやすい石畳を歩き続ける為の登山靴やトレッキングシューズの使用を強く推奨する。
歩いた感想は?と聞かれたら、何百年前の旅人もこの道を歩いたのだという何とも言い難いロマンを感じ、大きな達成感を得ることが出来た。素晴らしい道であり、永く後世に残される歴史あるトレイルだと感じた。ぜひ多くの方に歩いてもらいたい。
01■8:26 スタート地点として選んだ三枚橋。小田原駅からバスで17分。箱根湯本駅のすぐ近くなので、小田原から箱根登山線で箱根湯本まで電車でもOK(14分)
02■道なりに湯本の街を歩く、ゆるい上り坂。
03■多くの路地をのぞき込みながら歩く。
04■8:56「石畳入口」と書かれていたので、ここからアスファルト道路と離れる、ワクワクしてくる。
05■各所にこのような看板で解説があるのが楽しい。255m残されているのか、なるほど!
06■普通の民家かと思っていたところに「馬の飲み水桶」が!さすが箱根である。
07■はじまった石畳。歩いてみると、やはり石。ゴトゴトとして不揃いで、思ったより歩きにくい。それでも昔の人にとっては特別な道だったのだろう。
08■今降りてきた道を振り返る。石畳である。
09■ゆるやかなカーブを描く石畳道。
そうそう、この道を歩いてみたかったのである。
10■歩いた季節は3月、昨年の秋の落ち葉がカサカサと音を立てています。
11■ゆるやかに登り、アスファルト道と合流する。
12■しばらくアスファルトが続く、広い歩道が歩きやすい。
13■何やら石碑があった
14■路の脇に立派な滝が…鎖雲寺さんというお寺でした。
15■このあたりから路肩に雪のかたまりが残されていた。少し雹がパラパラと降ってくる。
16■現在地は左の赤。今日のゴールは左の芦ノ湖を目指しています。
17■アスファルトから脇の自然路と書かれたルートに入る。女コロガシ坂?なんだかスゴイ名前だ。
18■何がどうやったら、こんな名前の坂が出来て、現代に残されたのか…?
(後に調べたら馬に乗った女性が落馬して命を落としたことから名づけられたらしい。オソロシイ…。
19■このあたりは、箱根ジオパークであるので詳しい解説看板があるのでついつい足を止めて読む。よってペースは上がらない。
20■今のところ、登山というより平行移動のトレイルといった感じで、大して疲れることなく進む。
21■先の見えなくなるほどのまっすぐな道。誰も歩いていない。
22■地図をみると川があるので、どう越えるのかな?と思っていた。丸太橋…?
23■ああ、こーゆーことですね。増水時は渡らないようにしましょう。
24■よく考えられている、大雨の日にはロープで縛ってあるから流されることは無いわけだ。
25■10:06 橋を渡り、山に向かうと新しい坂が、割石坂?曽我兄弟はいろいろな所で名が残るこのエリアの有名人である。
26■アスファルト道から割石坂と書かれた石畳道に入る。
27■なかなか絵になる石畳である。この頃になると、石畳の形状が、色々あることに気付く、歩いていると違いが非常によくわかる。
28■スギ林の中に続く石畳道。
29■石畳道の下には車道が走っており、時折車が通る。
30■これより、江戸時代の石畳!なんと、今までのはそうではなかったのか!と少しビックリする。
31■明治になっても石畳を人は歩いていたのだ。※東海道線は、明治22年(1889年)開通、箱根登山電車は大正8年(1919年)に開通
32■東京-大阪を結ぶ日本最大の街道として多くの人々が歩いていたのである。
33■10:18 接待茶屋跡、現代でいう高速道路のサービスエリアのようなものだろうと推測しながら歩く。
34■ここで、またアスファルトにであう。
35■こんどは道は下に降りていく、素直に従うのみである。
36■石畳道というより石段の道である。
37■3月なのに雪というか雹が降ってきて、かなり冷えてきた。
38■まだ降りる、川がありそうだ、
39■小さな木の橋がある。
40■ちいさな小川を超える
41■この図解を見て、石畳を作るのは結構大変そうだと気付く(遅い)。ただ並べただけかと思っていました。
42■さらに、横にある並んだ木の下にも石が敷かれていることも初めて知りました。
43■それを知って路を眺めると、見る目が変わってくる。
44■大澤坂、看板が割れていいたので最上段が読めず想像力で補う。
45■人がひとつづつ組み合わせて石を並べた道…。この大量の石はどこから持ってきたのだろう。
46■発掘調査が行われていた、土に埋もれた場所の下にも石畳が…。年々埋まってきてしまうのか…、なんとか保存して欲しい。
47■石畳のヘアピンカーブ
48■ココあたりから斜度があがり、登っていると息が切れてくる。
49■道路から離れ、山あい感が強くなり、登山の雰囲気が強くなってきた
50■風情ある石畳を歩いていると「古道をトレッキングしている」という雰囲気に浸れる。
51■今も昔も、道を壊す第一の破壊者は「水」。排水路も用意していたとは。
52■美しい石畳
53■歩いていたら集落に到着
54■本陣跡のバス停
55■この集落は「畑宿」という集落、歩いていていい感じである。
56■めちゃ分かりやすい看板。いまは大体このあたり。この図のルートのスタート地点も「三枚橋」である。
57■寄木細工が名物なのであちこちに体験コーナーの看板がある。
58■この山道も東海道なのだ。
59■畑宿バス停にある公衆トイレを借りる。
途中にトイレが有るか?無いか?も大切なポイントだ。
60■お寺と寄木細工の中を通って、次なる旅路に向かう
61■守源寺さんの看板。なんとも大変なご苦労をされているようだ。
62■この道をまっすぐ進む。
63■10:53 巨大な土饅頭が見えてきたと思ったら「一里塚」だった。想像の5倍くらい大きい。
64■こんな大きな土の盛り土を4kmづつ作っていくのは大変だったろうに…。
65■二つある大きな盛り土の一里塚の間に道は続いていく。
66■なにかのモニュメントのようでもある。
67■路は山に入り、いよいよ山越えをしている実感が出てきた。
68■非常に「いい感じ」の石畳道である。しかし、当たり前だが、石一つ一つが、サイズや厚みが違うので、一歩一歩慎重に歩かなければいけない。
69■これが排水路、これで雨の時の水を道の外に排出するのだ。
70■山はそろそろ斜度を上げてきた。
71■なぜ石畳になったのかの解説、膝まで泥水に浸かって歩くのは嫌だなぁ…、石畳はありがたい道なのだ。
72■標高が上がって来たのか、雪が舞いだした。
73■3月でこの雪である。箱根、侮るなかれ
74■11:08「七曲り」と呼ばれる坂の連続の道を歩く。
75■そろそろ歩道がカチカチに固まった残雪で埋もれてきた。
76■橿の木坂(かしのきざか)バス停、雪も降ってきたがレインウェア等の装備は有るので問題はない、いざとなればバスに乗りエスケープという手もある。
77■バスの時刻表はこんな感じ、日中であれば一時間に1本あるならば安心である。(2025.03時点)
78■ふむふむ、最終は16:58ですね。例えば子供や同行者が、疲れてしまって歩きたくない!歩けない!となった場合はバスに乗れるのである。
79■11:23 橿木坂は斜度が今までで一番急な坂道。この坂を一般の庶民の老若男女が登っていたと思うと、大変だったろうなぁと思う。
80■さぁ、山を登るぞ!と登山が好きです♪という人であればいいだろうが、歩きたくないなぁという人には厳しい道であろう。
81■坂の名前の石碑があちこちに有り、どれも雰囲気がいいのでつい写真を撮るのでペースは上がらない(言い訳)
82■風が当たる場所は、真冬のような雪の景色に変わってきた。
83■上の車道ではヘアピンカーブの連続を車が上がっていく。スタッドレスタイヤであろうか?
84■11:32 この三叉路を左に行く。まっすぐ行くと車道と書かれている。先を急ぐ。見晴茶屋の付近。
85■案内看板
86■等高線は書かれていないが、一番の急な坂道は超えたと思い安心する。
87■目標は芦ノ湖、甘酒茶屋で休憩をする予定、あと少しである。
88■雲助についての説明文、とりあえず全部読んでしまい。慌てて先を急ぐ。
89■アスファルトの道と離れ山の中を歩く、途中、歩いて降りてくる2組の外国人観光客とすれ違う。初めてのすれ違いである。
90■路は斜度を緩め、ほぼ平行に山の中腹を進んでいた。
91■石畳のコケが濡れると滑りやすい。今回、サロモンのトレランシューズで歩いたが、それでも数回、滑ってバランスを崩しそうになった。靴は大事である。
92■晴れていれば景色も良いと思われる。
93■11:42 映画のロケに使われてもいい感じの雰囲気ある石畳が続く。
94■お寺の庭のような石段まで。これが東海道なのか…。
95■熊笹の中を進む石畳道。
96■数週間前の寒波で降った雪が道の脇に残っている。
97■これはこれで、三月の春を待つ山を歩いている感がある。
98■石畳は濡れていて、滑りやすい。
99■と思ったら猿滑坂。
100■こういう、名前の由来の看板があるのは歩いているアクセントになって嬉しい。
101■相変わらず素敵な、坂の名前が刻まれた石柱がある。
102■先ほどと上下が逆さまに記された地図
103■坂の途中で階段があり、車道に出る
104■そして横断歩道を渡り、また階段となる、トレッキング路の人のための横断歩道が嬉しい。
105■ヘアピンカーブの車道に対して、石畳道はショートカットして登っていくイメージ。
106■山の上は雪のようだ
107■長い階段が続く
108■ところどころにある「須雲川自然探求歩道」の地図。
109■もう少しで「甘酒茶屋」
110■かなり気温も下がったので、甘酒茶屋で休憩をしようと思いつつ歩く。
111■追込坂の石碑
112■甘酒茶屋の近くになると、雪で石畳が見えなかった。
113■12:20 旧街道休憩所到着
114■現れた「旧街道休憩所」に入ると無人であった。ここが甘酒茶屋かと思い愕然とする、甘酒は…?
115■と思ったら、隣に甘酒茶屋発見。人もいる。
116■雪は本降りになってきた。
117■おでんと甘酒を注文。暖かい…、生き返る。
118■中には大勢の観光客の方がいて囲炉裏でくつろいでいました。
119■日本遺産、箱根八里の案内も
120■12:50 甘酒茶屋を出て再度出発。ゴールはもう少し。
121■石畳が雪で覆われて、非常に歩きにくい上に滑るというハードな状況。
122■しかし、一歩歩くことに変わっていく景色は美しい。
123■雪が降る、無音の中、ただ歩いて登っていく。
124■誰もいない映画の中のような世界を歩く
125■13:01 白水坂
126■この景色を春や秋も歩いてみたいと思う。
127■ここは、観光客が芦ノ湖から甘酒茶屋まで歩くコースになっているらしく、外人さんのグループと数組すれ違う。
128■美しい石畳と雪。寒いし条件はハードだけれど、少し得をした気分で歩く。
129■晴れていればここからの景色も楽しめただろうけれど、今日は景色は無し。
130■新緑の季節は素敵だろうな、と思う。
131■路が芦ノ湖に向かって緩やかに下がってきた。
132■湯本から登ってきた。
133■権現坂、ホントそうだと思う。看板に書いてある通りである。
134■13:28この絵になる石碑を見つけると撮影してしまう。
135■雪に覆われた石畳の下り坂は、油断すると転倒するので注意。
136■車道が見えてきた。歩道橋を渡る。
137■歩道橋の上は雪で真っ白であった。
138■まだ新しい看板。
139■開けた場所に出た。
140■立派な石碑がある
141■ケンペルさんとバーニーさんである。
142■大正時代の石碑。
143■13:39 芦ノ湖周辺は前が見えなくなるほどの雪が降っていた。
144■13:49 芦ノ湖湖畔に到着、ここを今日のゴール地点とする。
145■この日は大寒波が襲来していたらしく、マイナス2℃で大雪となった。
146■宿に辿り着くとテレビの画面で先ほどいた場所が映っており、急な寒波で、箱根は立ち往生が多発と報じられていた。急な天候変化は山では当然の事と想定し、レインウェアの上下など必要な装備を持参してこの素晴らしい古の街道を楽しんでもらいたい。